朝日新聞に連載されていたという「江戸しぐさ」に関して、本がいくつか出ているなかでどれかを和もの場で取上げてほしいと、和もの場メルマガを読んでくれている友人からリクエストハガキが来ていました。
「江戸しぐさ」の本は幾つかあり選ぶのに迷いましたが、なにか自分のビジネスのプラスにもしたいと欲張って「商人」のキーワードが入っている本書を選びました。
今回は、その感想文を投稿します。
______________________________________
『商人道「江戸しぐさ」の知恵袋』越川禮子著,講談社,2001
たくさんの「江戸しぐさ」が紹介されているなかで、本書を読んで一番印象にのこっているのは、紹介されているメインテーマの「江戸しぐさ」たちではなく、「江戸しぐさ」がなぜ残らなかったのかを解説されている部分だった。
この「江戸しぐさ」が、負けた側の歴史として埋もれてしまっている文化そのものだという指摘があり、近代日本のなかにもまだまだそんな「断絶」があるのだと初めて知った。
特に、明治初期に、京都から官軍が江戸へ攻めあがってきたあとに、「江戸っこ狩り」が行われ、江戸しぐさが根絶やしにされようとしたそうだ。
学生時代に古代史に興味をもっていたころ、古事記に記載されているなかで怪物退治されたと記されているところは、実は、征伐された側の地方有力者達だと知ったとき、自分が生まれた地元にも昔有力な豪族がいたけれども退治された側として記載されていたので、身半分切り取られたような、真っ白な空白が目の前にぽっかりできたような間隔に襲われたことがある。
知らない真実が、足元にすぐ眠っている気がしてならなかった。
負けた側という残りの半分をしらないまま、わたしたちはこれが全てだと思いこんで生きているのだと、足元がぐらついた気がしたのだ。
江戸はわたしにとってゆかりがある土地ではない。
それでも、今でも世界中で戦争があり負けた側が悪とされ殺されている現状がテレビで身近に見聞きされることと比べれば、江戸時代から明治期の間に根絶やしにするために狙われた集団が居たことさえ知らなかったことのほうが、とても身近で、「消された記憶」の恐ろしさを肌に感じる気がする。
本書は、多く「江戸しぐさ」が紹介され、それぞれの解釈が示され、「江戸しぐさ」が現代にも通じる意義を中心にかかれた書だった。
以後、できれば、「江戸っこ狩り」について、どうやって「江戸しぐさ」が消されていったかという過程が書かれている歴史ものを読みたいと思った。
_____________________________________
(幸田)